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Time Will Tell

『Time Will Tell』

 

時はいつもあなたの味方。どんなに不幸な境遇も、時が風と共に運び去ってくれる。どんなにつらい思いだって、氷が溶けて水になるように、時がその輪郭を消してくれる。ただ、あなたはそれをやり過ごせばいい。やがてそれがどこか懐かしく、どこか面はゆい傷になるまでやり過ごせばいい。

 

第1話「名前のない喫茶店」

第2話「鉄筆少女」

第3話「ヤンとラッシー」

ボーナスチャプター:Unnamed

 

(書評)名前のない喫茶店-より

(Aさん)「名前のない喫茶店」は、秋山さんの小説との連なりで読むと、雰囲気がよくて面白かった。読後感が良い。(Kさん)高校生の時に京都のロック喫茶巡りをした夏を思い出しました。当該の「名前のない喫茶店」にも行ったハズ!当時の大徳寺境内の宿や京都の夏の風情を山ほど思い出しました。喫茶店文化って時代の大事なBGMだなと再認識です。(Iさん)ザラついた感じが気持ちいい。

 

(書評)鉄筆少女-より

(Kさん)「鉄筆少女」は「十八歳の原点」だった。泣けた。細やかな描写。この時代特有の匂いが好き。(Aさん)「鉄筆少女」これもタイトルが良い。鉄筆という言葉が持つ、強さ、硬さに、少女という言葉をぶつけてくる潔さ。読む前からテンションが上がります。(Yさん)鉄筆少女は夢に対する解釈が興味深かった、そして鉄筆ってそうかそれか。(Nさん)鉄筆少女、良かったです(´▽`)ノ

 

(書評)ヤンとラッシー より

(なかの真美さん@njet2_)業平心さん著の「ヤンとラッシー」の挿絵を描かせていただきました!物語のどの部分を描いているか、小説とともにお楽しみください♪(Nさん)「滝田登」が雨の日に出会った猫「ラッシー」と女性「ヤン」との甘酸っぱさと切なさが交差する大人の青春物語。(Iさん)ぼくの青春時代のノスタルジックなおはなし。(Aさん)この空気感や喪失感が、とても好き。(Jさん)直球の恋愛物語。レトロで懐かしい舞台設定とこの語り口が好き。浸れる。(Aさん)若者と、猫と、猫にまつわる恋。レトロとして描かない姿勢が、後々まで忘れられない出来事なのだと訴える。

 

試し読み

第3話 鉄筆少女より、不思議な女の子「カコ」 との会話の場面

 

 彼女は空を見るような視線で僕に語りかけた。

「私はわかるの、誰が土砂降りの雨の中を平気で歩けるのかって」僕のことだ。

「どうしてそれがわかるの?」

「それは――」彼女は初めて僕の質問に答えてくれた。「あなたの夢を見たの」

「どんな夢?」

「啓示のようなもの。それは潜在的な悩みの現われで、私ではない誰かのものだったの」

「夢はランダムな電気信号だって本で読んだことがある。特に意味はないし、そこに意味を見出すのはナンセンスだって」本の受け売りである。

「違う。夢はあなたがやり残したり、言い足りなかったりしたときに生まれる感情が作り上げるいわば創造物なのよ」

「つまり気持ちの燃えかすみたいな?」

「脳が勝手に結びつけたものじゃなく、そこには必ず意味のあるものが生み出される」

 僕はしばらく耳を傾けた。

「だから私はいつも注意深くその意味について考えるの。夢にはそれを見た人でないと理解できない世界があるのよ。あなたは――」そう言って彼女は子供に話しかけるときのように、僕に目線を合わせた。「土砂降りの雨の中を歩いていた。そして何かを話したがっている」

 僕は彼女の言った話の意味がわからなかった。たとえ、彼女の夢の中に僕が登場したとしても、それは僕の意思ではない。僕が何かを話したいと思っていたとしても、それが何であるのか見当もつかない。

「君ではなく、ぼくが話したい?」

「わたしは聴く準備はできているわ」

「今すぐに思いつかないけれどしばらく考えてみる」僕は我慢強くそう答えた。